ある経営者の孤独

チャーチルだかジョージ・ワシントンだかどこの誰の言葉か忘れたが、

「生涯を終える時に親友と呼べる人間が３人もいれば、多い方だ」　そうである。

零細企業から大企業にいたるまで、トップに立つものは孤独とお友達。

権力と金と服従を得る代わりに責任と孤独を背負わなければならない。

部下に慕われるリーダー。
信頼のおける部下に相談役。

部下に恐れられるボス。
信頼のおけない部下に相談役。

民主主義と独裁主義。

民主主義を夢みながら実際は独裁家族政権をばっちりふりかざすボスと酒を飲んでいたら、

最近寂しげな顔をチラと見せるようになったボスが更に寂しげに、言った言葉。

「嫁に　あんたは友達おらん　言われた」

食べていた鍋を思わず吹きそうになったけど、顔を見たら真剣だったので、話をちゃんときくことにした。

「あんたは、金つながり以外の友達がおらんやろ。思いやりがないからや。」

と奥様にいわれたらしい。

独裁主義者が自分の孤独に気づいた時ほどみじめなものは無い。
できれば、武田信虎の如く、老いても独裁、孤独って何？俺が法律じゃ、って感じで
あの世に逝ってほしいと思ってたんだけどなあ。

恐らく嫁と喧嘩の末に身も蓋も無い言い方をされたのだろうなと思いつつ、次の言葉を待つ。

「そういえば、俺が誘うことはあっても誘われたこと、ほとんどないわ。」

・・・そらそうだろう、王様を誘うのは勇気がいることで、
プライベートで気を遣うのなんて誰でも嫌だ。
大体、怖いし（実際怖くないが怖いと思う人が多い）誘うにも店にうるさいし
主導権握りたがるし、奢るつもりが奢られるし。

大体、誘われたいように見えない。

なので、そのままそれを言ったらば、

「まあ、実際俺うるさいし。奢る方が楽やねんけどな。そやけど、そういや○○も○○も
俺がいつも誘うばっかりや。長い付き合いのんは○○と○○やけど、あいつも家帰りよるからな。」　

ボス自ら正解を言っているが本人は気づいていない。

みんな家庭が忙しのだ。
お小遣いも不況のあおりで少ないし、気と金をばんばん遣う会社がらみの付き合いは最小限にとどめたい。
彼らだって、金と時間が余ってたらボスと酒だって飲みたいし、新地にだって繰り出すだろう。

でも実際は余裕無いし、子供の受験は大事だし子供の野球は大事だし、
嫁との買い物や旅行も大事だし、しかも最近肝臓弱ってるし、で
たとえ奢りであっても早々帰宅を優先させる父親達なのである。

独身で酒好きで彼氏のいない私だからこそ、彼に付き合えているのである。

世の中には、リストラにあい、嫁と子供に出て行かれ、
帰ればヒステリックな嫁もいない代わりに何も無い１ＤＫのアパートで、
コンビニ弁当と缶ビールでやり過ごしてる人だっているのである。

女がいて、金があって、ヒステリックだけどとりあえず嫁がいて、そこそこ豪勢な家もあり、
誘えばついてくる酒飲み友達も何人かいて、店には名前を覚えていてもらって好かれている。

これで友達がいないとか抜かすのは贅沢病か年のせい。

大体、と思う。

私と会えるとなると、取引先に誘われていた約束をさっくり変更し、
彼らのいつものノリでははしご３～４軒のところを２軒できっちり終わらせ、
私の元にすっとんでくる。
その時の会社がらみの友人達は、「えらい今日は付き合い悪いな」「年くったな」と思っている筈。

なんだかそれでも寂しそうな彼に、

「嫁も友達少ないと思うよ。」　って言いそうになったが、取りやめた。

かわりに、チャーチルかワシントンかの話をしておいた。

もし私が彼に恋してるときだったら、

「私がいるからいいじゃない」　と言ったと思うけど、嘘つきになるのでそれは言わない。

寂しがりやでワガママな困ったとっつあん坊や、である。

コメント 2

私が彼に恋してる時の言葉に、シンクロしました。
一度恋した人のことは、大体わかる。でも、ただ分かるだけで人生かけて助けようとは思わないのよね。
by きく (2007-07-14 12:10) 

＞きく

ザッツライト。なのよね。
まあ、最近はぼやいたことも忘れがちの様子の本人。
人生かけなくて良かったよな、とつくづく思う。

まあ、かける気なかったけど。
by ハマコ (2007-07-23 12:39)